特集

クリニックのマーケティングを考える(3)

患者満足度アップのための戦略「打ち手」構築とは?

〜その2 医療機関の広告とその効果測定について〜

(株)リスクマネジメント・ラボラトリー
北海道・東北本部長 渡辺 徹

今回は医療機関の広告について考えてみましょう。

広告の目的は?

「マーケティング」という言葉から、まず広告をイメージされる先生も多いのではないでしょうか。クリニックにとっても「広告」はマーケティング戦略の重要な位置を占める分野であり、また、患者さんとの有効なコミュニケーション手段のひとつです。「広告」は単にクリニックを知ってもらうだけでなく、患者満足に繋げ、ファンを増やすことが目的になってきました。その意味で「コミュニケーション手段」という捉え方は非常に意味深いと思います。

最近は大手企業もTV中心のマス広告だけではなく、ブログやホームページをうまく使って、複合型の広告戦略を展開しています。まず、ブランド名を知ってもらったり関心を抱いてもらうのはTVで、詳細な商品特性はホームページで、双方向のコミュニケーションはブログで、さらに今流行のTwitterを活用するものも出現したりと、それぞれのメディアの特性をうまく利用し合っているのです。このようなきめ細かい対応により顧客満足の獲得やファン作りを広告の分野でやり始めているのですね。

クリニックの広告戦略についても今まで以上に複合的な工夫が必要になってくるでしょう。

広告の効果は得られていますか?

さて、まずは現在先生方が採用している広告がどのくらい有効なのか、広告の効果測定について考えてみたいと思います。

全国のJRや地下鉄等の駅構内にはクリニックのサインボード広告が数多く設置されています。多くの通勤・通学者が繰り返し看板を目にすることで認知度向上には欠かせない広告媒体と言われていますが、実際に来院された患者さんのうち、どれくらいの割合がこの構内看板を見て来られたのかを検証されている先生は意外と少ない気がします。但しこのタイプの広告は長期間の掲示により徐々に効果が出てくると言われており即効性はあまり期待できませんので、時系列で効果をチェックしていくことが必要となります。

ちなみに私自身は車での移動が多く電車はほとんど利用しませんので、駅構内のサインボード広告でクリニックを選んだことはほとんどありません。近所でクリニックを探すときは@行きたい診療科目で近所の評判を家内や知人に聞く→A車で通りすがりに記憶しているクリニックと重ね合わせる→B該当するクリニックのホームページを探して先生の専門や設備、休診日・診療時間を確認する→そして選ぶ、という選択行動です。近所にない診療科目の場合はインターネットの検索エンジンから探しに行くこともあります。

このように患者さんによってクリニックの選択行動が異なりますので、自院の患者さんの特性(性別・年齢・職業等)を十分考慮し、できるだけ効果の高い媒体を選択する必要があります。

広告媒体として代表的なのは駅の看板、電信柱の案内、野立看板、バスのアナウンス広告、タウンページ、ホームページなどがあります。どの広告もそれなりに特徴があり有効な感じがしてつい採用してしまい、いつの間にか年間の広告費が驚くほど高額になってしまっていることも珍しくありません。一般企業は広告の効果測定がうまくできないため、どの広告が有効なのか判定しづらいのですが、クリニックの場合は来院した患者さんにアンケート形式により直接確認することができますので効果測定は可能です。すでに実施されている先生方も多いとは思いますが、以下にその方法をご紹介しますので、この機会に是非一度試してみてください。

広告の効果測定法

アンケート例

問診票記入時にアンケートを取る方法です。問診票の最後に先生が出されている広告のすべてを書き、最後に「口コミで」を項目に加えて、「何をご覧になって当医院を知りましたか(複数回答可)」と質問します。100人集まれば、統計的にはほぼ正しい数字になります。できるだけ新患を対象にアンケートを取ってください。

このアンケート調査だけで、どの広告を見て来院する方が多いのかが、かなり正確にわかります。

では、ここで質問です。最も嬉しい答えは何だと思われますか?……

それは「口コミ」です。口コミが生まれるということは、来院した患者さんが高く評価しているという証拠になります。評判がいいということです。最も効果の高い心強い広告宣伝ですね。もしも口コミが少なければ、是非口コミの生まれるマーケティング戦略を組み立てていきましょう。

診療科目によっても広告媒体の効果は違ってきます。例えば脳神経外科や産婦人科などは診療圏が広いので、タウンページや郊外では野立看板も効果的だといわれています。逆に内科や小児科などは診療圏が比較的狭いので、診療所そのものの看板に効果があるといわれています。

実際、アンケート調査してみると一般論とは異なる結果が出ることも多いものです。調査結果を基に、もしもタウンページが効果的で野立看板に効果がなければ、野立看板をやめてその分タウンページの広告を大きくするなどの修正ができるようになります。効果のないムダな広告費も削減できるでしょう。

広告規制について

また、ご存知と思いますが医療機関の広告内容に関しては、医療法69条で規制されています。院外広告として何ができて何ができないのかは医療法69条をご参照ください。広告規制は緩和傾向にありますが、まだまだ患者さんが選ぶために必要な情報をすべて掲載できるまでには至っていません。そこで、広告の目的をしっかり見据えて、複合的に考えるのがよいでしょう。

HP(ホームページ)は院内広告と同等の扱いとなっていますので広告規制の対象外です。さらに、平成12年の第4次医療法改正にて、医療機関のホームページアドレスを院外広告に記載することが許されるようになりましたので、院外広告からホームページに誘導し、ホームページ上でクリニックの詳しい情報を伝えるという相乗効果を作ることができるようになりました。このような効果的なコミュニケーションを是非考えてみてください。

次回はホームページの活用方法をご紹介いたします。

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