あとがき

年初の東京株式市場の株価は、1年3ヶ月ぶりの高値がついた。経済状況の一つの指数としては上々のスタートを切ったようにも見えるが、実態経済は、甚だ不安材料を示す数字が多い。デフレスパイラルは加速し、失業率が5%を超え、求人倍率は0・3%台であり、今春の大卒者13万人が就職出来ないという。期待していた民主党政権も今のところ有効な政策を示していると言えない。確かに、我々は直ぐに結果を求め過ぎるが、4ヶ月では、約50年間に渡って自民党と官僚が食い散らかした“ゴミ屋敷”の玄関先も片付かないことは、分かり過ぎるほど分かっている。今年こそが、民主党政権の正念場であることは間違いが無いが、今夏の参院選挙次第では、民主党の一党独裁を許すのか、国民も大きな岐路に立たされる。しかし、国民にも危機感が欠如していると思う。この非常事態は、大不況以前より、小泉・竹中改革の“負の8年間”がジワジワと国民生活に暗い影を落としていたのである。終身雇用制度の崩壊、新医師研修制度による医療崩壊、規制緩和では各業界内には過当競争をもたらし、疲弊した。そして、額に汗することなく、クリック一つで「金を儲けることが悪いのか!」という拝金主義者が台頭した。しかも、残念なことに、政治の本質を知ろうともしないオバチャン連中には、小泉さんは未だに圧倒的な支持がある。

医療界は、2009年度の医療機関の倒産件数が、7月時点で前年の総件数を超え、2倍近くになっている。それも放漫経営というものでなく、明らかに不況型倒産に近いものである。8年間の小泉政権下での医療費削減策の影響は大きかった。今年4月、診療報酬改定がある。事前の情報によると、歯科がプラス2・09%、医科がプラス1・74%と、歯科の改定率が32年ぶりに医科を上回るとのことである。当初から、危機感を持って方針転換を示した日本歯科医師会への論功勲章との意味合いが強いとの声がある。プラス1・74%では、殆ど“焼け石に水”であり、医療機関の経営改善に結びつかない。様々な問題が噴出し、脆弱さが目立つ鳩山政権ではあるが、民主党が4年間は政権を維持することは間違いない。日本医師会の今後の対応が注目される。

年頭から、厳しいことを書いたが、「いわて医師協同組合」は、眞瀬理事長の強い指導力の元にこの困難な医療状況に立ち向かうべく努力するつもりである。眞瀬理事長は「全国医師協同組合連合会」の副会長の重職も担っておられ、非常にポジティブな考えで仕事に当られるので、私共、役職員もこの不安な時代を乗り切れる勇気を頂けるような気がしている。

菅原 克郎

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