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環境とこれからの医療活動

                               環境カウンセラー 五ノ井   稔

V 医療と廃棄物

1.はじめに

 医療関係施設に限らず、全産業、業種、又一般家庭のおいても、廃棄物処理問題が困難な事態を生じ社会問題になっています。21世紀の社会では、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会構造になっており、ライフスタイルの見直しが必要となってきております。
 病院等から排出される廃棄物も大量消費の社会現象をそのまま投影されている様に見えます。この見直しは急務であり、生産・流通・消費・廃棄の各段階で消費の抑制が必要で環境への負荷低減を促す3R「リデュース(削減)リユース(再使用)リサイクル(再資源化)」を推し進める必要が出てきております。
 医療機関において1999年のフイリピンへの不正輸出事件では、古紙に混じって感染性廃棄物が確認され、国内最大規模の不法投棄事件になった岩手・青森県境には、首都圏を中心とした企業2,600社のうち医療機関が一番多く335機関にもなっております。最近では7月26日に横浜市の産婦人科で感染性廃棄物を一般ゴミとして処理しており、8月25日には高松市の海岸で注射器などの医療廃棄物が大量に不法投棄された事件が起こっております。現実に対する危機感が医療機関において十分共有されているとはいい難く、当事者意識を持ってそれぞれの段階に応じて医療機関・関連企業・行政との連帯を構築していくことが急務です。
 廃棄物対策の進め方については、今後ますます厳しくなることが予想されます。これからは廃棄物の減量化・適正処理の確保だけではなく、事業者の責務として良質な医療の提供とともに、廃棄物が健康問題や環境保全上の問題を生じないよう、環境マネージメントシステム等の構築が必要と思われます。

2.感染性廃棄物処理マニュアルの改定

 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という)において、医療機関等から生じる感染性廃棄物(感染性病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれがある廃棄物をいう)は、特別管理廃棄物とされており、密封した容器での収集運搬・処分方法が基準として定められております。この処理基準等を補完するものとして感染性廃棄物処理マニュアルが平成4年に作成され広く医療現場で活用されてきました。廃棄物の判断の多くを医師等に委ねており判断基準が客観性を欠いている等の指摘がなされ平成13年から2年間検討を行い、平成16年3月に感染性廃棄物の判断基準の明確化の向上等を内容とするマニュアルの改正がなされました。
  • (1)改正の内容
     感染性廃棄物の判断に当たっては、「形状」「排出場所」「感染症の種類」の3つの観点により判断をする。
    『感染性廃棄物の判断フロー』
    感染性廃棄物の判断フロー

    通常、医療機関等から排出される廃棄物は左記の「形状」「排出場所」及び「感染症の種類」の観点から感染性廃棄物の該否について判断できるが、判断できない場合は、血液等その他の付着の程度や付着した廃棄物の形状、性状の違いにより、専門知識を有する者(医師、歯科医師及び獣医師)によって感染のおそれがあると判断された場合は感染性とする。
     なお、非感染性の廃棄物であっても、鋭利なものについては感染性廃棄物と同等の扱いとする。

  • (2)感染性廃棄物の適正処理
     医療関係機関等は排出事業者として、改正されたマニュアルに基づき感染性廃棄物の取り扱い等に関する統一的な内部規定を作成して、その内容を確実に行われるよう施設内部の関係者に周知徹底が必要です。
     また、委託先である廃棄物処理業者との連携により医療廃棄物・感染性廃棄物の適正処理が推進されることが必要です。
IWATE MEDICAL COOPERATIVE ASSOCIATION●No.55