ビジネス・ウォッチング

ビジネス・ウォッチング 〜職場訪問記〜 vol.6

ニッコー・ファインメック株式会社

今回登場するニッコー・ファインメック株式会社は、岩手県でいち早くリサイクル事業に取り組み、一関市千厩に拠点を置きながら東北6県に産業廃棄物処理事業の範囲を広げる環境先進企業です。いわて医師協同組合とは発足時から協力関係にあり、前号でご紹介した医療廃棄物処理事業協力会の代表を務めています。

岩手県で初のリサイクル事業の認可

一関市千厩町は、古くは内陸部と三陸沿岸を結ぶ交通の要衝の地として栄えた町。往時の面影を漂わせる町の中心部から車で10分余り北東に入ると緑豊かな農村地帯が広がっています。その一角に建つ工場群が今回ご紹介するニッコー・ファインメック株式会社。約4万平方メートルという広大な敷地に、第一工場から第三工場、関連施設の建物が白とブルーを基調に統一され、緑豊かな自然に溶け込むように建ち並んでいます。

同社の前身である日興薬品商店東北営業所の創業は昭和50年1月。小野寺司元会長が、東京の日興薬品でリサイクル業を学んだことがきっかけでした。日本が工業国として繁栄する中、公害問題や環境問題が取り上げられるようになり、「リサイクル業は一生の仕事」と心に留めたと言います。

最初は日興薬品の営業所として出発したものの、5カ月後に独立した小野寺さんは個人経営で再生銀のリサイクルを始めました。「リサイクル業の許可をいただいたのは県内で一番早かったと思います。当初からレントゲン写真を回収し、フィルム等から感光材料として使われている銀を抽出し、精錬してリサイクルすることが中心でしたから、病院とはずっと深い関係が続いています」と、小野寺さんは振り返ります。

産業廃棄物処理全般へ
事業の拡大を図る

個人経営から昭和55年に有限会社日興薬品を設立。世界的に地球環境問題が注目される中で産業廃棄物処理業の事業範囲を広げ、工場を次々に新設稼働するなど順調に発展してきました。

平成11年にさらに「ニッコー・ファインメック株式会社」と称号を変更。現在は産業廃棄物処理業、一般廃棄物処理業(小型家電再資源化事業所認定)、貴金属の再生・販売、化学薬品の販売、一般貨物自動車運送事業、宝飾品の加工販売など、幅広い事業内容を展開しています。

「かつては廃棄物の焼却処理も業者に一任されていましたが、廃棄物処理法の改正を受けて処理は焼却業者に依頼し、今、当社の医療廃棄物事業としては回収・運搬に重点を置いています。当社の核はリサイクル業であり、リサイクルはそのまま環境事業。知識と技術を生かして貴金属も長年扱っており、特にインゴットの製造は東北では当社だけです。それが他社と比較した場合の強みであり、今後も継続していきたい」と小野寺さんは自信を見せます。

医師協とは長い付き合い
女性社長の誕生

平成元年、医療廃棄物の二次感染の徹底防止に向け、当時の厚生省のガイドラインに沿って、その完全処理が求められるようになったことから、医師協では平成3年に医療系廃棄物処理対策委員会を設置。平成6年4月にいわて産業廃棄物協同組合が設立されると、その中に医療系廃棄物処理事業を行う「医療系廃棄物部会」が設置されました。岩手県産業廃棄物協会の理事を務めていた小野寺さんは、その当時から医師協の協力業者として、今日まで大きな力になってきました。

「医療系廃棄物部会ができて廃棄物を効率的に運ぼうと協同事業に発展していきました。医療系廃棄物は普通の産業廃棄物と違って処理が困難で簡単には埋め立てできません。協同組合を立ち上げた我々も勉強会を開き、県の支援や医師協の力添えをいただきながら処理体制を確立してきました」と小野寺さん。その後、平成23年3月に事務局を医師協に置く「医療廃棄物処理事業協力会」が発足(前号に掲載。以下・協力会)。会員は産業廃棄物処理業者の中でも医療系廃棄物処理の許可を有していること、さらに岩手県産業廃棄物処理業者育成センターによる格付け業者であることが条件となり、現在、10社で構成されています。

ニッコー・ファインメックは協力会の発足時から会員であり、現在は代表も務めています。その任を継ぐのは平成25年4月に社長に就任した小野寺真澄さん。銀座の大手宝飾店や取引会社に勤務したのち、元会長である父の司さんからバトンを引き継ぎました。

東北の真ん中でネットワークとフットワークを大切に

二代目社長の真澄さんが率いる社員は現在69名。「しばらく総務で勉強しましたが、経営者としてはまだまだなので、父にも会長として代表権を持っていただき、今年の2月に会長職を退かれるまで父と二人三脚でやってきました」と、謙虚に話します。

独り立ちした今は「スタート時から当社の得意分野であるレントゲンフィルムの再生銀を中心とした貴金属リサイクルを核に、産業廃棄物全般にわたり県内のみならず、東北6県のネットワークを生かしてフットワークを軽く、事業を広げていきたいと思います。一関は東北の真ん中ですからね」と、決意を語ります。

ニッコー・ファインメックは、東北6県の自社のネットワークを活用して排出者のニーズに適した処分委託先を紹介しているほか、非鉄金属、鉄鋼、肥料等の原料や代替燃料によるリサイクルの提案、さらに自動車運送業(青ナンバー)を取得し、各種収集運搬車両をそろえて様々な排出形態に対応しています。

医療系廃棄物に関しては、注射針等の感染性廃棄物から薬品、カルテ等の機密文書、レントゲンフィルム、医療機器やPCB廃棄物、レセプトコンピュータ、院内PHS、歯科除去冠、歯型石膏など、医療機関から排出される多くの廃棄物に対応。中でも、多様な廃電子機器は、小型家電再資源化事業所として大臣認定を受けた処理工場内で、高度に再資源化されています。

協力会の代表も務める小野寺社長は、「産業廃棄物の中でも最後に残るのは医療廃棄物。扱いは困難ですが、人口が減ろうと病院が減ろうと医療のインフラの裏方として絶対に止まってはいけない仕事。協力会は、選ばれた10社がそれぞれ個社の特徴を生かしつつ医療廃棄物に係る知識や意識のレベルアップを図るために大切な情報交換の場。これからも法改正や世の中の動きに素早く対応していきたいですね」と話します。

岩手県で先進的にリサイクル業を始め、これまで循環型形成推進功労者大臣表彰、全国産業廃棄物連合会「優良事業所」表彰、岩手県環境保全活動知事表彰など数々の表彰を受けてきたニッコー・ファインメック。平成31年2月には健康経営優良法人(経済産業省)に県内の産廃業者として初めて認定され、「地域未来牽引企業」の認定証とともに輝きを増していました。

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創業者の小野寺司元会長

小野寺真澄社長

 

会社の全景

工場の入り口にある「憩いの森」。一関百景にも認定され、社員はもちろん地域の皆さんにも憩いの場として利用されている。

ハードディスクは手作業で取り外し、データ破壊後にアルミとレアアースが再資源化される。

純金(上)と銀インゴット。回収したフィルム銀や高品位基板は最終的に精錬し、インゴットに成型して出荷される。

 

地域未来牽引企業認定証

健康経営優良法人2019認定証

ニッコー・ファインメック株式会社
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岩手県一関市千厩町奥玉字天ケ森75ー6
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