エリア13

地区だより(22)

けったら喰ったら、く
一日一善

花巻市医師会 高木丘クリニック 佐藤 寧

この頃お気に入りのグルメ漫画に、『孤独のグルメ』と『忘却のサチコ』という2作品があります。外食する際は、その店を漫画の題材としてどう料理しようか等と、ついつい原作者の視点で、妄想に耽ってしまうこともしばしばです。今回取り上げるのは、『美味しんぼ』の様な、上から目線グルメ漫画向きではなく、『孤独のグルメ』に出てくる様な、さすらい感が匂うお店です。いみじくも同じ「いちぜん」という店名。

まずはじめに、花巻公設市場内にある食堂の、「いち膳や」を紹介いたします。市場関係者の食事処という性格上、平日の早朝の6時半より開き、昼過ぎには閉店してしまいます。ここの人気メニューは、ずばり海鮮丼(¥580)。味はそこそこですが、わさび醤油をザっとぶっ掛けて、汚れてページの取れかけた『うしろの百太郎』を読みながら頬張るうちに、一気に涅槃の境地へボンボヤージュ。一品、お好きな小鉢を選択出来るのも、幸せな気分にしてくれます。使ったことはありませんが、ポイントカードもあります。期待度と満足度とは、得てしてどうしても反比例してしまうという人生の真理を、痛感させてくれるお店です。楽しめるかどうかは、あなた次第。(まぐろづけ丼も、好き)

次に紹介しますのは、石鳥谷は新堀の「一善」です。戸塚森近くの国道沿いの、すぐ分かるロケーションにあります。ここの名物は、板ドバそばというお蕎麦で、生卵を溶いた温そばつゆにだっぷりとつけて、ズルズルと啜って楽しみます(書いていてヨダレ出てきた)。ドバそばの名前の由来はあるのですが、喰うのに忙しくて但し書きを読んでも毎回忘れてしまい、覚えておりません。すみません。皆様、御自身でお確かめください。美味しい野菜てんぷら付きのメニューを注文すると良いでしょう。お酒も付けてみたいのですが、まだ実現しておりません。

かねがね、医業というものはお坊さんや弁護士と同じく、ある意味他人の不幸がめしの種である因果な生業であり、それ故に古くは賎業とされていた時代もあった訳で、あまり威張れるものでは無いと思っております。だからこそ、一日一善を心がけたいのですが、いかんせん、煩悩の塊であるわたくし奴、一善もとい、一膳どころか何膳でも行ってしまう我が欲の果てしなさが恨めしい。せめて、時々「いち膳や」と「一善」を訪れて、海鮮丼と板ドバそばを食べながら、人類にとって本当に善き事とは何なのか、妄想に耽るのが精一杯でございます。

※この記事は「医報はなまき」419号(平成27年11月)に掲載されたものを、編集部の許可を得て、一部再編集のうえ再掲しました。

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一日一善