大震災から一年

いわて医師協同組合
理事長 眞瀬 静

平成24年3月11日、岩手県内は1年前のように小雪交じりの朝を迎えました。犠牲者の悲しみを忘れることが無いようにと戒めの意味を込められたような天気でした。「東日本大震災・大津波」で県内最大の約1700人が犠牲になった陸前高田市では岩手県・陸前高田市合同追悼式が行なわれ、沿岸被災地・内陸各地においても追悼行事が営まれました。「3月11日午後2時46分」は、皆様の心の中に辛い記憶として刻まれ、様々な葛藤の中でこの1年間を過ごしてまいりました。長く感じられる1年とも言えるし、短かったと思える1年でもありました。この災害により全国で死者・行方不明者は約2万人を数え、岩手県内では死者4671人、行方不明者1249人(平成24年3月9日現在)でありました。本組合でも4名の先生方がお亡くなりになりましたし、組合員のご家族、医療機関のスタッフの中にも多くの死者・行方不明者がありました。改めて心からの哀悼の意を捧げます。

本組合には、被災直後から全国医師協同組合連合会、全国各地の医師協同組合から多くの救援物資、義援金が寄せられました。早急に被災地の組合員の先生方のお手元にお届けしました。全国医師協同組合連合会という組織の中での“強い絆”を感じました。

未だ毎日のように余震が続き、「3月11日」を経験した私達にとって心の中の不安は払拭できません。福島第一原発事故の処理も順調に行なわれているとも思えませんし、政府・識者の言う無責任な「想定外」という言葉で惑わされているように思われます。この大震災で分かったことは、自然の猛威には人間の叡智も為す術がないということと、「当たり前の生活」が幸せの基本であることです。今年2月やっと復興庁が発足しましたが、きちんとした復興の姿が見えてきません。このような最悪の環境の中で、多くの困難を抱えながら、力強く被災地で診療を再開した先生方も居ります。本当に素晴らしいことです。然しながら、被災地の医師不足・看護師不足は深刻な状況にあります。岩手県医師会による「JMAT岩手」の活動は、被災地住民の心の支えになっており長期に渡りそうです。医療無くしてコミュニティは構築できません。

1年間を振り返ってみて、この大きな災害と低下傾向の経済環境の中で、本組合の事業は前年並みの実績を上げることが出来ました。組合員の皆様の温かいご支援の賜物であり心から感謝いたします。本年度もこれまでにも増して、組合員の先生方にお役に立つような商品の提供、心の不安を幾分でも軽減できるような情報の伝達に努めます。「東日本大震災・大津波」から1年、この辛い経験から得られた教訓が生かされるような場面が再び来ないことを祈りながら、本組合の経営に邁進したと思います。

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