〔特別講演(要旨)〕
『テロの現状と危機管理について』
 AIU保険会社 危機管理コンサルティング室
室 長  白 井 邦 芳 氏          

 現在の米英軍によるイラクへの武力行使につきましては、 過日の全医協連セミナーの講演で3月20日頃までには攻撃が開始されると予測をしておりましたが、 幸か不幸か的中しました。 冷戦時代の戦争とは革命的に変化しており、 具体的には情報戦、 短期戦を狙った戦争であると言えます。 本日は、 戦争に関するお話しと 「テロ」 のお話し、 それから世界に起きている危機のお話しを現実的な面からお話ししたいと思います。
 非常に重要な事項は、 高度な政治的理由によって外に漏らされていない事実関係があります。 本日は、 このような場でありますので、 実務的なお話しが出来ればと思っています。
 私が今この場で皆様方のお顔を確認しながら5秒程何も話さなかったとします。 そうしますと皆様の90%位の方々が 「どうしたんだろう」 とイライラします。 これは 『時間の緊張』 といいまして人心掌握の一つの手段でございます。 私はニューヨークの同僚と会議電話を通じて現在の戦争の状況と 「時間の緊張」 はどうなのかと聞いてみますと、 この戦争にはキイになる登場人物がいます。 ジョージ・ブッシュ大統領ではありません。 主役の一人は、 チェイニー副大統領であり、 今回の戦争に大きな役割を果たしているのがラムズフェルド国防長官、 ウォルホビッツ副国務長官がいますが、 その下に冷戦後に国防省を追われ復権した人達がおり、 パールであり、 その下にはクリストルがおります。 ラムズフェルド、 ウォルホビッツ、 パール、 クリストルの4人がイラクへの武力行使を行ったと言われております。
  「9. 11」 が起点になりますが、 その前に起こり得るべき伏線について皆様が分かりにくいのでありますが、 「9. 11」 を予測させる大規模な計画が‘95年フィリッピン国際警察で発覚します。 「ボジンガ計画」 と言いまして専門家内では有名な事件でありましたが、 CIAもFBIも無視したわけであります。 アルカイダの計画の中でも最も精緻な計画であり、 実行されたのか 「9. 11」 であります。
 テロの現状は、 組織はネットワーク型テロ組織で、 2.3人のチームを組み、 セル(細胞)と呼び、 自立型で指揮官不在型組織で独自の判断で行動を起こします。 しかも自爆型組織で命を落とすことを怖がらず高い成功率を誇っている。 これらの組織に対する情報は不足し、 最近は、 大規模なテロよりも、 数十〜百人単位のテロが常態化しています。
  「9. 11」 の被害総額は300億ドル(約4兆円)と言われていますが、 これを機に、 危機は潜在化から顕在化に変わってまいりました。 ある日本の大会社では 「現地にいる駐在員が自分の身は自分で守れ。 危険であれば直に戻って来い。 しかし、 ビジネスの勝機を失うような形で戻れとは言えないから、 自分の判断でやって来い」 という対応する会社も出てまいりました。
 危険区域を表す5段階評価がありますが、 米国は4段階目のオレンジ色の表示がされていますが、 米国全体は3段階目(真中)の黄色でありますが、 最も危険なのはニューヨークに集中しているというのが米国の考えであります。
  「大儀名分はブッシュドクトリン」 ということで危険な国には先制攻撃であるとして、 今回のイラク攻撃の作戦を 『衝撃と恐怖』 と称しています。 これは既に‘96年に先に述べた4人の高官によって作成され、 核兵器を使わずに同様の規模の効果をもった攻撃で肉体的、 精神的に疲弊させ短期で圧倒的優位をもって終結させようというものです。 この戦いの本流はキリスト教原理主義者で、 非常に強いタカ派であり、 新保守派(ネオコン)と呼ばれる人達です。
 話しは戻りますが、 '97年エジプトのルクソールのテロ事件では、 犯人6人が観光客62名射殺しています。 日本人は11名おり、 10名の死亡者は全て観光客であります。 助かった1名は現地の添乗員で普段から危機について知識があり、 重傷でありましたが生き残っております。 10名の観光客は、 逃げずに固まって動かなかったのでマシンガンの的になりました。 日本人は誰かの指示がないと動けないということなのです。 「危機管理」 の欠如であります。
 爆発テロの場合は、 犯人自身も死んでしまうが成功率はほぼ100%と言われています。 「回避できない」 のが現実です。 どう対処すれば良いかというと、 人の集まる所を避けるのが一番の対策であります。 爆弾テロが毎日のようにありますし、 政府要人が被害を受けることは少なくて一般の事業者、 観光者が被害者になることが圧倒的に多いわけであります。
 サービス拒絶型攻撃というものもありまして、 最近、 NASAとかペンタゴンに対して日本の企業を使ってセキュリティの弱いとところに菌(攻撃用プログラム)を植え付けまして、 日時を指定して世界各地からインターネットを使って一斉に攻撃を仕掛けるわけであります。
 化学兵器について、 保存状態が良ければ50年位は使用可能であります。 生物兵器に関しては、 天然痘とか炭疽菌は日本で最も被害が出るのではないか予想されています。 私も最も危惧しておりまして、 北朝鮮がノドンとかテポドンTの弾頭に化学・生物兵器を着けて東京に落ちた場合には、 場所は発見出来ますので対処できますが、 国際空港で生物兵器をばら撒かれますと、 添乗員とか観光客が世界中に病原菌をばら撒き被害は甚大であります。 これが一番危険であると言われています。
 誘拐件数は、 コロンビアが4,000件以上あります。 日本人の命の値段は、 昨年コロンビアで誘拐された方は身代金を 「10億円」 要求されたそうです。 ヨーロッパ人で百億円請求された例もあります。 約67%の例が身代金の支払で解決されております。 10%が殺害。 解決に要する日数は50%が1〜10日、 50%が100日以下、 数ヶ月以上拘束される場合は救出の可能性が少なくなる。 ペルーの日本大使館公邸不法占拠事件は解決に4ヶ月かかっておりますが、 4ヶ月以上となったら殺害の可能性が高くなっていたと思います。
 これまではアジアでのテロの危機は少ないと考えられていましたが、 現在は全く逆で、 フィリッピン、 マレーンシアが多く、 ‘96年の4%から2000年23%と増加しております。
 職場内での暴力行為は、 米国ではあります。 職場内殺人事件の80%が銃使用によるものです。 外部の人間が職場に侵入して暴力行為が60%を示しております。 米国も日本でも外部の人の入室に対してのセキュリティは厳しくなっております。
 最近発表された具体的なテロの標的になりやすい施設として、 ファーストフード、 インターネット関連会社、 米国系航空会社、 ホテル、 清涼飲料水会社、 米国を代表する企業等であります。 当然、 デパートですとか映画館も危険です。
  「基本対策」 としては、 標的になりうる危険な場所には行かない。 危機管理対策を事前に検討し、 徹底し、 シュミレーションを行って欠点を是正する。 「自分の身は自分で守る」。 危険地に行かなければならない場合は、 正規チケットを購入すること。 旅行のスケジュールは家族、 上司に事前に報告する。 極力JALかANAを選ぶ。 午前中に目的地に到着するように計画する。 移動が夜間になるとタクシーが危険な情報ルートになっていることが多い。 明るいうちに到着し、 身の保全を確保する。 目立たない行動パターンに務めましょう。
 不審な郵便物が届いたら空調を止めてください、 止めないと拡散し被害を拡大しますので注意してください。
 北朝鮮問題はイラクと一線を画して考えて下さい。 イラクは最後まで戦う気持がありますが、 北朝鮮は、 10年前の中国のように核兵器を開発して国際社会で大国として認められることを狙っているわけであります。 本当に米国と戦争したいとか、 敵対関係になりたいとかは思っていないのです。 明日にもノドンが飛んできて東京が壊滅するとかは私どもも考えてはおりません。

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