徒然のやぶにらみ
きょうもまた、 芝居三昧

盛岡市立病院 及川  司

 私の趣味は演劇である。 観劇する方ではなく舞台に立つ方なのだ。
 仕事が忙しければ忙しい程練習に身が入るようで、 今では私の最大のストレス解消法となっている。
 過日、 「第6回もりげき演劇賞、 演技部門賞」 なるものを頂いた。 盛岡は演劇が盛んな街で、 現在20余りのアマチュア劇団があり、 盛岡劇場を中心に年間約40作品が上演されている。 演劇賞はこの作品群から選考されるもので、 面はゆい限りであったが評価された事を素直に喜び有り難く頂戴した。
 思えば10年前、 ひょんな事から始めた芝居である。 当時の私は仕事がやっと、 無趣味で何の取り柄もない自分の先行きに漠然とした不安を抱いていた。 そんな折、 目に飛び込んだのが市の素人役者募集の記事、 「これなら出来る」 と深い考えもないまま申し込んでしまったのだ。
 それは 「銀幕の月」 という、 時空を越えて物語りが展開する幻想的な芝居であった。 私は中年であることが幸いし、 科白の多い徳川夢声役を頂いた。
 さて、 時は経ち本番まで後1ケ月という時期に、 私は全くの不注意で右足を骨折してしまった。 それからは入院、 手術と芝居どころではない日が続いた。
 ある日、 ベットで所在ないまま脚本を読んでいると、 演出家ら数人が見舞いに訪れた。 何故か会話がぎこちなく、 早々にお帰りになった。 実は、 あとで聞くと、 芝居をあきらめるよう説得に行ったのだそうだ。 だが、 脚本を読んでいた私を見て切り出すことが出来なかったのだという。
 かくして松葉づえの徳川夢声が誕生した。 あの時、 説得されていたなら当然今の私はなかっただろう。 ちなみに今回受賞の演出家は同じ人、 全く人生は味なものだと思うのである。


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