COLUMN一灯

50歳の手習い〈筋トレ編〉

久慈医師会
金子クリニック 金子 卓司

開業までの不摂生がたたり、10s体重増加、人生初めて「腹が出て」、行きつけのショップの洋服も合わなくなった。鏡に映る自分に納得できなくなっていた矢先、震災が起きた。自然に4s減。この機会を逃すまいと市民体育館のトレーニングジムに通い始めた。

トレーニングジムに通う人を大別すると次の3種類のようである。

  1. ランナー ▷ ジョガーからフルマラソンまで、走ることを目的にする人たち。夏場は屋外でランニングするので、ランニングコーナーは比較的すいているが、冬場はかなり混み合う。
  2. とりあえず全体的に体を動かして、ダイエット、健康管理と考えている人たち。バイクをこいで、「安全な」筋トレマシーンで「適度な」筋トレをする。この種の人たちが最も出入りが激しい。つまり、始める人と辞める人が多い。
  3. 明らかに体型が変化するほどの筋トレをする人たち。彼らは筋トレマシーンをほとんど使用しない。バーベルとダンベルですべてをこなす。
写真1
(写真1)

最初はごく軽いランニングと筋トレマシーンの軽い筋トレをするだけだった。ある日、筋骨隆々のH君に声をかけたら、「そっちの筋トレマシーンではあまり役に立ちませんよ。こっちに来ませんか。」

体育館のトレーナーH氏も同意見で、「こちらのマシーンはご高齢の方でも安全に筋トレできるものです。バーベルやダンベルは持ち上げる以外にバランスを取らなければなりません。各所の筋肉を総動員するので全然違いますよ。先生は細マッチョを目指してはどうですか。」

細マッチョ=EXILE!!と勝手にイメージを膨らませ、誘われるまま「入部」してしまった。

ここで「部員」紹介。写真1参照。

前列右から

部長の超人ハルク(私が勝手につけた)ことK氏 ▷ 校事務員でありながら総合格闘技のリングにも上がる。「先生、私のリングパンツに『金子クリニック』入れませんか」と言われたが、遠慮しておいた。続いて柔道の元インターハイ選手の介護士M君、世界シニアクラッシュ選手権3位のN君。

後列右から

柔道重量級のM氏、ボディーメイクにはまったH君、私を筋トレに引き込んでくれたH君、私、顧問で超人ハルクの師匠T氏 ▷ 元ボディービルダーで私の1歳年上の52歳、170sを担いでスクワットをこなす。警察官のS氏、その部下のS君 ▷ 男子新体操の元インターハイ選手。

写真にはいないが、

元顧問のS氏 ▷ 昨年の3月までK中学校の副校長先生で私と同い年。高校時代から砲丸投げでインターハイ・国体の県代表選手だった。ベンチプレス140〜150s。格闘技の高田道場にいたM氏、クラークケントに体型そっくりの米国人H氏、等々。

皆、トレーニング中は真剣そのもので強面に見えるが、基本的にスポーツマンなので(加え、私が年長者のためか)、気さくに教えてくれ、補助をしてくれる。(補助がないと上げきれなかったときにバーベルで窒息する)

ここで細マッチョとゴリマッチョの筋トレ方法の相違について。

細マッチョ ▷ 適度な有酸素運動(ランニング)と一回しか持ち上げられない重さ(1RM)の60%(60%1RM)で回数をこなす(20〜30回)。EXILEの体脂肪率は 6〜7%前後と驚異的。あのバスケの神様マイケルジョーダンの全盛期でさえ8%前後であった。皮膚の下はすぐ筋肉である。ジムに来ている消防士の方々はこちら。

ゴリマッチョ ▷ 瞬間のパワー重視で、バーベルやダンベルのウエイトをどれだけ増やせるかにこだわる。80〜90%1RMで10回以内を数セット。こちらは筋肉の肥大効果が大きく、行き着くところの代表選手はシルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツネッガーである。筋トレ部はほとんどがこちら。

ベンチプレスやスクワットなどで使用する鋼鉄製の棒があるが、これをシャフトという。よく、重量挙げで持ち上げるあの棒である。シャフト単独で20sあるが、皆様は見たことがあるだろうか、あの鋼鉄の棒が耐えられず「しなる」のを。オリンピックの重量挙げの映像では見たことがあったが、自分の隣でシャフトをしならせてトレーニングしているのをみるとさすがに見入ってしまう。シャフトの両サイドに50sずつのプレート(あの円盤状の重りをプレートという)、つまりバーを含め120sくらいになると、シャフトはしなるのだ、置いてあるだけで。それをベンチプレスやスクワットで上下動させるとユサユサとしなる。

そのような、とんでもない環境の中で、ベンチプレスを40sから始めた。シャフトにつくプレートが10s×2なのでかなり貧弱?に見えるがこれが精いっぱいだった。超人ハルクK氏に「まずジジュウを目標にしましょう。」と言われ、血液と酸素が筋肉に奪われ回転しない頭の中で「ジジュウ??」に当てはまる漢字を探して、「ああ自重(自分の体重)か」と理解した。「自重が挙がったら、次は100sです。」「100s!?・・、いやいやムリムリ・・」重量挙げに体重別があることからわかるように、当然ながら65sの私と100sの男性が100sを挙げる意味は全然違う。私の場合は『100s=自重×1.5』なのである。ゴルフの経験は浅いが、スコア100を切るくらい(いや90か?)ハードルが高そうだ。

写真2
(写真2)

半年かかって『自重』を挙げた。自重を挙げるころには体型が変化してきた。さらに1年経過して重量はアップしたが、ここからは牛歩のごとしで100sまではあと2年くらいかかるだろうか。

どの世界にも老若男女問わず、自分より先を行き、優れている人がいる。その世界に入ると、その人から学ぶために謙虚になれることが素晴らしく、有り難い。運動した後の爽快感とビールがたまらない毎日である。

写真2説明 ▷ 超人ハルクこと、高校事務員兼格闘家のK氏。写真の種目はインクライン・ベンチプレス。トレーニング用のベンチを45度前後に起こした状態でダンベルを真上に上げる種目。大胸筋の上部をターゲットにして分厚い胸板をつくる。彼が持っているダンベルは片手で36s!!久慈体育館のジムでは彼しか持ち上げられない。この時連続8回可能であったので、Maxは片手45〜50sか。残念ながら久慈体育館には36sまでしか置いていない。

こんな彼も、2年連続でインフルエンザに罹患し、ダウン。リング上よりきつかったとのこと。さすがに、来年は当院で予防接種を受けるか?

↑ このページの先頭へ