COLUMN一灯

多職種連携は本当に正しいのか?

岩手郡医師会
ゆとりが丘クリニック 高橋 邦尚

高橋 邦尚

政府及び行政は、平成26年度診療報酬の改定にあたって、在宅医療の充実に向けて具体的な方針を提示した。いわゆる『在宅医療を担う医療機関の数と質の確保』の2点である。在宅医療への取り組みが具体的に示され、各々に以前より高い診療報酬が配されている。 また、多職種の事業所の協同参画が励行され、患者と家族がそれらのスタッフにグルっと囲まれる構図である。実際に今まで私が参加した患者宅での『医療連携のためのミーティング』でも、狭い居間にケアマネージャーを中心に各事業所スタッフがギチギチに座り込んで話をする光景をよく見かけた。

岩手郡医師会のある先生から、次のような御報告を頂いたことがある。

『奥様が大腸癌術後、病院よりやるべきことは済んだと言われ在宅となりました。御夫婦は共に80歳を越えていわゆる老々介護です。退院後、御夫婦は確かに病院側、在宅医側の説明を聞き納得して在宅へ移行したそうです。やがて自宅に医師が往診し、訪問看護師が訪れ、薬剤師が薬を持参して細やかに説明を加え、立てなくなるといけないからとリハビリも来てくれたそうです。さらに、苦しかろうと室内に酸素吸入器と喀痰吸引器が置かれ、ケアマネージャーがこれで安心と言って帰りました。毎日、めまぐるしく訪れる人々に応対して1ヶ月。このような生活の結果、月末の請求書が26万円であったそうです。7、8万円払えば後は返してもらえると聞いたけど、私達には無理です。申し訳ないと思いましたが、頭を下げてお断りをいたしました。』という内容であった。

おそらくこれは特別な例なのだろうと思う。しかし実際の話でもある。

一方で日本医師会は在宅は入院よりコストが掛かることもあり得る、としている。私達の地域でも、なんとかして在宅医療の基盤を作ろうと、行政・医師会を中心として日々多くの話合いが持たれているが、このような患者の生活現状をふまえて議論をするのでなければ、患者側の納得は得られないだろう。今後はこれからの協議が、在宅サービスを受ける患者の経済状況にも目を向けたシステムであって欲しいと思う。我々、岩手郡医師会も当然のことながら在宅医療から目を背けることは出来ない。岩手郡2市3町すべてが無理であるとしても、その各々の地域に応じた在宅のありようがあるはずである。

そして最後に、私共医師にも自分の健康と守るべき家族の生活があることを忘れないで頂きたいということ、以上の2点を切に望みたい。

これからのことをふまえて、我々、岩手郡医師会もこの事業に全面的に協力して行きたいと考えている。

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