特集

クリニックのマーケティングを考える(4)

患者満足度アップのための戦略「打ち手」構築とは?

〜その3 クリニックのホームページ・クニリックカードについて〜

(株)リスクマネジメント・ラボラトリー
北海道・東北本部長 渡辺 徹

今回は医療機関のホームページ・クリニックカードについて考えてみたいと思います。

ホームページを開設する目的は?

私はクリニックを訪問する際、また医師会セミナーや奥様医業経営塾などでも先生や奥様にホームページの開設理由をお尋ねしています。最も多い答えは何だと思われますか?実は「???」なのです。つまり明確なお答えがないということですね。特に目的を意識せず業者さんに勧められるまま、いわゆる「表札」のつもりで開設したというクリニックが多いようです。

次に多いのが「新しい患者さんに来院いただくため」というお答えです。確かに「来院アンケート」などで調査をすると、最近は「ホームページを見て来た」という患者さんが増えています。私も知人との雑談の中でクリニックをどのようにして選ぶかを尋ねると、家から近くのクリニックであっても一応ホームページを検索し、先生のプロフィール・診療方針等をチェックしてから決めるという意見が多くなっています。このような選択行動はインターネットの普及とともに最近になって増えてきたのではないでしょうか。今後は本格的なネットワーク機能を持たせた携帯電話(スマートフォン)の開発が進み、より一層患者さんが手軽に情報を入手できる時代になっていくでしょう。

さらに注目すべきはインターネットユーザーが若者だけではなく、例えばサラリーマンが定年退職を機に初めてパソコンを購入するというケースが増加しているように、今後は60歳以上のリタイア年齢層へも効果が期待できるということです。ただ現時点においては検索エンジン(GoogleやYahoo)で自院をページ上位に位置させるにはかなりのノウハウが必要で、初診のクリニックを探している患者さんの目に止まるのはなかなか難しいかもしれませんね。

ホームページは患者満足獲得にこそ利用できる

そこで少し視点を変えてみましょう。増患対策を考える時、とかく新患獲得に気持ちが向いてしまいますが、最も大切なのは現在の患者さんを失わないということではないでしょうか。来院している患者さんの満足度が高ければ必ず口コミ効果が表れます。

私は出張が多いので、航空会社のホームページをInternet Explorerの「お気に入り」に入れています。出張のときに今日は遅れずに飛んでいるのかな、と発着案内をチェックしたり、また、「何か新しい情報は入っていないかな」など、目的がなくても覗きに行きます。

これと同じようなことをクリニックでもできるのではないでしょうか。ホームページを患者さんのPCや携帯の「お気に入り」「BOOKMARK」に登録してもらえれば、時々覗いてもらうことでツーウェイ・コミュニケーションのような効果を発揮してくれます。とにかく他院より接触する情報を多くすることが肝心です。人間は情報の多い方に好意を持つものです。

では、どのようにホームページを作れば「お気に入り」に入れてくれるのでしょうか。

変化する情報を大切に

私が航空会社のホームページを見る理由は変化する情報が欲しいからです。クリニックのホームページも、情報が変化していることを患者さんが認識してくれていると、必要なときに覗きにきてくれます。

しかし多くのクリニックは、まず表紙がきれいで(時々動画なども入って)、次に院長先生の診療方針や考え方、そしてクリニックの内部の写真などが見られるようになっています。制作業者の考えなのか、イメージ戦略をとることが多いようですね。

でも、ここは目的主義でいきましょう。まず、最初のページこそ「変化する情報」の宝庫にします。変化する情報とは、まず「今月の休診日と診療時間」です。先生を始め、クリニック関係者の皆様は休診日がいつかは当然わかっていますが、たまにしか来院しない患者さんは、休診が水曜の午後だったのか木曜の午後だったのか忘れてしまいます。そんなときホームページで確認してもらいます。また、学校の検診や予防注射、学会などで、通常と違う休診が発生したり、診療時間が変わったりすることもありますよね。そんなときこそ、ホームページの出番です。

さらに、「今月の混雑予想」をカレンダーに記載するのも、とても大きな効果があります。午前・午後あるいは午前・午後・夕方に分けて、混雑日には赤丸、比較的空いている日には青丸などの印を付けます。これは、ある銀行で実際に行っていたことの応用です。

以前、奥様医業経営塾で、あるクリニックの奥様に混雑緩和の方法はないかと相談され、混雑予想の話をしました。この奥様はさっそく看板屋さんに頼んで、待合室に混雑予想カレンダーを掲載しました。「その後、効果ありましたか?」と訊ねたところ、大きな効果ありとのことでした。看板屋さんに、「他のクリニックにも営業してきなさいよ」と勧めたくらいだそうです。

その他にも、インフルエンザ・ワクチンの状況など季節に影響される治療情報、新しい医療機器の導入、予約制のクリニックは予約のとり方、相談日などがある場合はその情報、病院でしたらベッドの空き状況、イベントのお知らせなども有効でしょう。

また、バス通院の患者さんが多い場合はバスの時刻表。これもクリニックから帰るときの時刻表だけでなく、来院する側に立って、駅から乗られる方が多いならクリニックに向かうバスの最寄り駅の時刻表なども喜ばれるでしょう。

このような「変化する情報」の次に、院長先生のお考えや診療方針、設備や医療機器の紹介、スタッフの紹介・ごあいさつ、などに続きます。

どのようにしてホームページのURLを伝えるか

ホームページを立ち上げたものの、どのようにしてURL(HPのアドレス)を伝えるのが効果的でしょうか。もちろん待合室や受付での掲示は必須ですが、有効な口コミツールとして札幌市内でポピュラーに活用されているクリニックカードをご紹介いたします。名刺大のいわゆるショップカード(ちょっとおしゃれなレストランや輸入家具店などに置いてありますよね)に似たものですが、それを二つ折り、あるいは三つ折りにしたもので、中には院長先生のご挨拶・診療方針、診療日・診療時間のご案内、ご専門の病気や治療法、院内設備の紹介など様々な情報が掲載されています。もしも携帯用のHPや携帯からの受付システムをお持ちでしたら、そこへのアクセス用QRコードの表示も効果的でしょう。

持ち歩きやすい大きさであることが重要で、サイフや名刺入れに入れておけます。これを3〜5枚くらい持っていれば、誰かに紹介したいときに「ここのクリニックいいわよ」といって渡すことができます。パンフレットやリーフレットを作成するより、口コミ効果を生みやすくするツールとして最適だと思います。

クリニックカード事例

このカードの表紙に、ホームページのURLを大きく印刷し、「是非、【お気に入り】に入れておいてください」と謳えば効果が上がりそうです。ここで重要なのは「ご自由にお持ちください」と書いて受付に置いておくだけではダメだということです。先生方も「ご自由にお持ちください」と書いてパンフレットや資料を置いた経験があると思いますがいかがでしたでしょう。殆どの患者さんが持っていかないのではないでしょうか。そこで、会計のときに3枚くらい(1枚ではだめです。口コミ効果のためです)積極的に「ご利用ください」と言って渡してしまうことです。これも重要なポイントです。

いかがでしたでしょうか?クリニックのホームページも少し視点を変えて、新しい患者さんに来ていただくツールから、既存の患者さんの満足度を向上させ、口コミ効果を狙うというツールとすれば、かなり有効な媒体になりそうですね。「広告」や「パンフレット」は営業っぽくなりますが、変化する情報満載のホームページは嫌味のない穏やかな「患者さんの囲い込み」効果が期待できると思います。よろしかったら実践してみてください。

なお、いわて医師協同組合ではホームページ作成業者さんをご紹介することも可能です。どうぞご遠慮なくお申し付けください。

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