情報部

平成21年度いわて医師協同組合セミナー

悩み解消!!医療現場を取り巻くクレーム対応−モンスターペイシェント対策−

講師:有限会社エファ 代表取締役 菊 地 理 恵
日時:平成21年11月21日(土)午後3時30分 場所:ホテル東日本14階「オーロラ」の間

参加者106名と、ホテル東日本の広い「オーロラの間」に溢れるほどであった。定刻、司会を情報担当常務理事・菅原で開会、眞瀬 静理事長より「これほどの大人数の参加者で溢れた医協セミナーは久しぶりであります。皆様のご参加に心から感謝します。最近の医協の状況について、少しお時間を頂いてお話したいと思います。様々な法律の改正があり、医師会関係の制度にも締め付けが行なわれるようになりました。医療廃棄物に関して更に厳しくなっております。不法投棄は前科がつきますし、医師免許停止処分となります。『いわて医師協同組合』では、万全を期して対応していますので安心してお任せください。もう一つ、本日のお話にも係ることですが、医局制度が崩壊し、医療の体系が昔ほどきちんとしていませんから、若い医師の中には、平気で前医批判をし、億円単位の訴訟が起こされるということも起こっています。本日は、そのようなリスクへの対応を、専門家からのお話を聞ける良い機会ですので、じっくり勉強していただければ幸いです。私事ですが、皆様のご支援のお陰をもちまして東北・北海道ブロックからの推薦で全国医師協同組合連合会の副会長を、今後2年間務めることになりましたこともご報告申し上げます」とのご挨拶があった。

次いで、司会から講師の菊地理恵先生の略歴の紹介があり、講師の先生が作成したレジメに従って講演は行われた。

1 クレームとは何か?

クレームをゼロにすることは難しい。付け加えると納得のいかないことを追求、主張するという、患者さんの怒り積み重ねが大本になっています。

2 では、クレーム対応とは?

納得の行かないことにきちんと答えてあげると言うことがクレーム対応です。その際、患者さんが最も注目することは、医療関係者の話し方、目線などの姿勢を見ているということです。良く相手の話を聴き、相手を知り、共感することです。誠意を持って対応することです。

3 クレームが発生する仕組みとは?

医療ミスで、クレームの発生するのは、実際、1%以下。99%は医療側の普段の対応に対する不満です。小さな不満の積み重ねが、長い期間の不満としてマグマのように溜まって暴発するのです。

4 クレーム自体は悪いことではありません“宝物なのです”

今までの仕事を見直すことが出来るし、仕事がマンネリ化しているとクレームが発生する素地になります。仕事の内容を充実させ、進化させる良い機会であるとポジテブに捉える姿勢が必要です。

5 クレームを出さないことの“怖さ”とは?

決して“クレームをゼロ”にしようと思うことなかれ
クレームゼロを目指すと、医療従事者の仕事が緊張を強いられ萎縮し、クレーム自体を隠蔽するような体質になり、隠蔽が発覚した際に事件、小さい時点で抑えられたものが拡大して、病院自体の存続を危うくする事態となることもあります。

6 呆れたクレームの2つのパターン

(1)粘質クレーマー

(2)あてつけ型クレーマー

7 脅し文句にはこう立ち向かうのです!!

  1. 「どうしてくれる?誠意をみせろ」
    対応:私も精一杯の誠意を尽くしております。足りない所はご指摘ください。
  2. 「マスコミ、インターネットに流すぞ」
    対応:マスコミに流すと言う人で、流すのは1%以下、「私共もきちんと対応したつもりです。本意ではないのですが、何等かの対処をします」法的措置も匂わせる脅し返し”という手法。
  3. 「保健所、行政に言うぞ」
    対応:「行かないでください」と頼むのは駄目、相手方はこちらの反応を見ている。毅然とした対応を。
  4. 「他の病院はこう対応してくれた」
    対応:「他の病院は他の病院、うちの病院はうちの病院です」ということではトラブルを大きくする。「そちらの病院の対応は、素晴らしい」と評価しながら、「うちの病院もそのような対応に努めます。ありがとうございます」と相手の話に乗っかる手法。
  5. 「これが原因で仕事が手につかない」
    対応:妄想型で、きちんとメモを取りながら患者さんからの情報を共有・共感することから始める。

クレーマー、苦情者のパターンを知っておこう

対応で大切なことは 1.相手方(患者さん)の行動をしっかり観察(ウォッチング) 2.何故そのような行動や言動をとるのか? 3.目的は何か?を把握し、ある程度パターン化してチームで対応することが望ましい。事前のシュミレーション、問答形式の訓練も必要。相手にもよるが、相手の考え方、思いを否定するより、相手の意見を共有、共感することが大切。時には、メモを取りながら、録音を取りながら、電話などは録音しておく。メモも相手に見せるようにして。

  1. カミナリ型…激情型、大声で恫喝する。
    ゆっくり落ち着ける場所に移動させ、一対一ではなく二人以上で対応すること、常に、冷静に徹底して話を聞く。メモを取る時は必ず相手に見せるようにして書く。
  2. 誘導・脅し型…ストーカー型、暴力団に知り合いがある。
    恐怖感を押しつけられるが、相手のワナに陥らず勇気を持って、自分だけの判断で話さず、「後日、相談の上にお話します」など焦らず対応する。
  3. 長期ネチネチ型…常習犯型、言葉の揚げ足を取ったり、長時間居座るタイプ。
    常習犯が多く、なるべく時系列に記録を取っておき、他部署連携を強め、院内ルールを強める。相手の矛盾点を突いて行く。
  4. いやがらせ型…時間的粘質タイプ、忙しい時間帯を狙い、人目を引く行動。威圧感のある人を4、5人連れてくる。
    必ず対応は2名以上で行う。相手に分からないように録音などは必ずしておく。曖昧な答えは言うべきでない。相手につけ込まれることになる。電話などは相手方が録音している場合が多い。院内で責任者のトップは最終段階とし、その前の段階で対応することが大事。

クレーム自体は“宝物”であり、病院の問題点を指摘してくれるし、病院で慣例になっている仕事を見直す絶好の機会である。

医師にとっては、どなたも多くの患者さんの一人でありますが、患者さんにとっては自分だけが頼りにしている医師というスタンスで接してきます。医療関係者は無神経な「ながらサービス」ではなく、必ず相手の目を見て、言葉をかけながら挨拶をすることが相手から好感を持たれる。トラブルを回避出来ることになります。とにかく、どんなことが問題になるか分からない時代です。小さな問題の積み重ねが誤解を招きクレームになります。患者さんと問題点に共感し情報を共有することで大きな問題に拡大することを防ぎます。(了)

菊地先生は身振り手振りを交え、時に、直接聴取者に語りかけ、豊富な内容で「目から鱗が落ちる」の感があった。一度では頭に入らず、今後、何回か聴いて勉強したいと思った。

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