情報部

本年も各分野から講師の先生をお招きして全6回にわたってセミナーを開催し、参加者から好評をいただきました。その集大成として、平成21年9月18日に特別セミナーの講演が行われましたので、講演内容を抜粋してご紹介します。

【紙上再録】 奥様医業経営塾受講者特別セミナー

ここがポイント採用のヒケツ

有限会社エファ 代表取締役 菊地 理恵 氏

面接する上でのポイント

1 静かで明るく落ち着いた場所を選ぶ

面接をしている側からスタッフの足音が聞こえたり、電話等の話し声が聞こえる場所はなるべく避ける。また、院長室など格式が高いと感じられる場所での面接は、面接者が緊張し、本来の姿を見抜くことができないこともある。

場所としては、スタッフが出入りしない休憩室やミーティングルームなど静かに話ができる場所を選び、被面接者に飲み物などを勧めながら穏やかな口調で話しかけ、趣味やスポーツなど答えやすい質問からスタートしていくなど、応募者の緊張を解きほぐす工夫をすることが望ましい。

面接者の心得6カ条

第1条決して乱暴な口の利き方をしない。
第2条応募者を見下す態度をとらない。
第3条学校名や最終学歴で応募者の能力を判断してはいけない。
第4条面接してやる、採用する上での決定権をもっているという態度をとらない。
第5条面接の途中でみだりに中座しない。
第6条応募者に自分の考えや価値観を一方的に押し付けてはいけない。

このうち、第3条と第6条は特にポイントになる。3条については、面接はいわゆる「人柄を見抜くこと」であり、面接する側も無の境地になることが重要である。余りにも職業を頻繁に変えている人や、派遣期間が長い人は一考を要する。しかし、面接に呼ぶ以上は職歴の変遷等もいったんリセットし、その人の人間性を見るようにする。また、6条については、面接者の心得として自分だけが話すことがないようにする。いかに話をさせるかが大事であり、質問形式で相手に答えさせるようにする。

2 本人の気持ちをしっかりと聞く

さきの第6条とも関連するが、面接をするということは本来、採用するかしないかを決定する情報を、様々な角度から入手していくために行うものであり、その回答によって採用するにふさわしい人物であるかを判断する手段である。しかしながら、採用者側からだけの一方的な質問だけで終わらせるのは問題である。いくらその心積もりでいても、いざとなるといい人材を欲しいと切望する余り、陥りがちなので注意したい。応募者は「採用して欲しい」という気持ちと同時に働こうとする病医院に対し、例えば次のような期待を持っているかもしれない。

  1. この病院で働けたらこういう仕事をしていきたい
  2. いろいろな技能や技術・知識をマスターしたい
  3. 老いた両親、小さな子供を抱えているので、なるべく残業は避けたい
  4. 今までやってきた能力を生かしていきたい

応募者の要望や意見を聞く場としても面接を有効に利用していく。もし、応募者から要望が出されたときは、病医院の考えや態度を正しく伝えていく。ただし、余りにも「いろんな体験をしたい」という人や「頑張ります」を連発する人は、後からトラブルが起きることも多いので要注意である。

3 労働条件をはっきりと伝えていく

ここは、大変重要である。近年の退職理由として特に多いのは、採用前に伝えられていた労働条件と採用後の労働条件が違うというのも大きな理由になっている。月々の仕事の中で予測できる状況は事前に伝えていくこと。入ってほしいがために面接段階でこちらの状況を甘く話すと後から支障を来たすことになる。

例えば、レセプト時期など、採用前に考えていた労働条件と実際の労働条件が異なれば誰もが失望する。期待のレベルが高ければ高いほどモチベーションが低下し、態度にも表れ、それが退職の引き金となる。長い目で見ていくと、決して病医院の良い評判にはつながりにくいので、この点は特に注意が必要である。

面接の心得

1 顔の表情で人材を見抜く!

ポイントは2つあり、その1つは「まず目をよく見る」こと。目は口ほどにモノを言うといわれるとおり、まさに目の表情はその人をよく表す。話をしているときに目がキョロキョロしてしまう人は自分に自信がなく、他人の意見を聞けずに自己判断で物事を決定する傾向も強い。注意を受けたり、細かいことを瞬時に覚えていく能力も弱いといわれる。「自分を過大に見せようとしているか」「素直な自分を見せようとしているのか」など、人材を見抜く上では目線をしっかり合わせることが必要である。

2つ目は「笑い方、笑顔を見よ!」。笑顔(微笑み)には大きく分けると2種類ある。「健康的な自然な笑み」と、「計算高く腹黒い微笑み」である。これは、面接する人の気持ち(心)がしっかりしていれば見抜くのは容易である。笑い方にも注意すべき点はあり、顔が引きつったような笑い方や口を大きく開けた高笑い、別の話題になっても笑いを引きずっている人は案外集中力に欠けるとみてとれる。

2 話し方で人材を見抜く

ポイントは2つで、その1つは「あなたの夢は何か」と聞いてみること。夢のとらえ方も大きくは2つに分けられる。(1)昔は夢があったが、今はないと答える人。(2)考えてもできそうにもない夢を語る人。(1)と答える人は心の若さをなくしている感が強い。最近は20代でも朝からため息ばかりついているような「若年寄」もいる。マイナス思考が強く、組織内での責任ある仕事を任されるのを嫌うタイプが多い。(2)は考えようによっては活発なプラス思考ともとれるが、極端な人は注意が必要である。自己表現が強く出てしまうせいか、意見が合わなくなると他責にする傾向が強いようである。

2つ目は、「話の聞き方」で人の本質は話を聞くときの態度、姿に表れるといっても過言ではない。常に相手の話に目線と耳を傾け、うなずきながらしっかり聴き取れる人は高得点である。「聞く」と「聴く」には違いがあり、後者は心と耳を使って聴く。いろいろな角度から聴こうとする人は一つ一つを自分のフィルターに入れようとする力が自然に身についている。したがって、心と耳を使って聴く人は自然にうなずける。例え失敗しても聴こうとする気持ちはあるので教えがいがあるという採用する側のモチベーションにもつながる。こういう人は患者様から「心が温かい人」といわれる。

反対に、話はよく聞いているように見えるが、下を向いたままだったりうなずきの小さい人は、患者様から「事務的な冷たい人」といわれてしまうことも多く、人を採用するときは特にこの点を見極めておくことが大切である。

そのほか、筆跡も性格や人柄を知る情報の一つになるので、手書きの履歴書やレポートも参考にするとよい。

面接者から病医院に対する質問

  1. 休日はどうなっているか…年間休日をカレンダーに印して見せるのもいい。
  2. 残業はあるのかないのか…一カ月間の中にどのくらい残業があるのか、この時期は忙しくなるなど明記する。
  3. いつ返事をいただけるのか…面接をして3日〜5日以内に返事すること。1週間すると、いい人材はほかに行く可能性がある。

病医院側から業務に関する質問

Qこの人にやめてほしいが、方法はあるか
Aミスやトラブルが多く、どうしても仕事に向いていないと思う場合は、細かく時系列に起きたこと、その際の指導内容を記録しておく。決して他人には見せない。時間をかけながらほかの仕事に向いているのではないかと示唆する。決して「やめてほしい」とは言うべからず。愛を持って話すことが前提。
Qスタッフ個々に賃金の違いが出てしまっているが、どうすればよいか。
A9割がたスタッフ同志は給料明細を見せ合っていると思っていい。開業して3年ぐらい過ぎたらある程度の基準値は税理士、会計士などのアドバイスを受けて策定する必要がある。1年目、2年目と段階を踏んで仕事レベルや身につけておくべき人間性などを項目に表しておくと目安になる。
Q勤務時間内外に行う勉強会は時間外手当を支給するべきか。
A強制する場合は支払う。自由参加型であれば支給する必要はない。なお、研修などを行う場合は余り遅い時間や休日は除いて、午後の休診時間などを活用するといい。

講師 菊地 理恵 氏

講師 菊地 理恵 氏

栃木県内のトヨタ系列自動車販売会社で営業スタッフ、社内教育課の営業トレーナーリーダーなどを経て有限会社エファを設立。現在、携帯電話のショップ、地方公共団体、百貨店内の専門店、病院のCS向上の仕組みづくりなど、斬新かつパワフルな指導で顧客満足の高い“組織人”の育成を精力的に展開している。

 

受講生

平成21年9月18日、ホテルメトロポリタンで開催された奥様経営塾受講者特別セミナーの講演会

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