COLUMN一灯

子を持って知る親の気持ち

宮古医師会
宮古山口病院 及川 暁

写真1

私には子供が二人いる。晩婚だったために、まだ6歳と1歳である。1歳の次男はまだどんな性格かわからないが、6歳の長男が全く私の小さい時の性格にそっくりなのである。これが頭が痛い。精神科医という仕事柄、子供のことを相談する方もいらっしゃるから、大体のことは良いほうから見て評価して、結果不安を減らすように助言することができる(認知行動療法の応用)。しかし自分のことはそうはいかない。長男が、物怖じしないで誰にでも話しかけたり、負けん気が強くて幼稚園の先生にも口答えをしたり、調子に乗ってはしゃぎすぎてほかの子供に怪我をさせたりとか。幼稚園に迎えに行くと、先生から「今日は○○ちゃんにこんなことをしてしまって‥‥」と説明されてひたすら頭を下げることもしばしば。周囲からは「元気があっていい」とか、「誰とでも仲良くなれていい」とか、「ほかの子よりも成長が速いだけなんじゃない」とか言われても、とても良いほうには見ることができない。

しかし、これらのエピソードは私が小さい時のエピソードとそっくりなのである。いや、私のほうがもっと手に負えなかったかもしれない。雪合戦の時に氷を握りこんで友達にぶつけて出血させたり、スーパーマーケットでシャドーピッチングをして一升瓶を何本もひっくり返して壊したり、幼稚園を抜けだして公園に遊びに行ったり。幼稚園の床下の物置にお仕置きで閉じ込められたことが何回もあったのを覚えている。うちの両親がどれだけあっちこっちで謝っていたのか、頭を抱えていたのか、今なら想像できる。親になって初めてわかることがやはりあるものだなあと最近は実感している。

家内の不安はもっと大きい。家内には、「悪くても私ぐらいの人間にはなれると思うよ、たぶんね‥‥」と慰めるので精いっぱいである。

それでもうちの長男は、「将来はパパとママのようにお医者さんになる」と言ってくれている。普段心配が多い分、将来医者になってくれたらその時の嬉しさはきっと素晴らしいであろう。そういえばうちの亡き父は、私が医師国家試験に受かったときは、喜んで飲みすぎて、側溝に落ちて怪我をしたと聞いたっけ。これからどんな人間に成長していくのか、きっとどこの親も同じであろうが不安と期待がやはり五分五分である。まずは健康に長生きして、医学部に入ったときに慌てないように学費を頑張って稼ぎたいと思う。私の親もそうだったように。

↑ このページの先頭へ