COLUMN一灯

変わりゆくもの

盛岡市医師会
はしもと眼科クリニック 橋本 真生

橋本 真生

学生時代を盛岡で過ごしました。その後盛岡を離れ、再度盛岡に戻り住んでから17年になります。勤務医時代は定期的に人事異動があり、色々な地に移り住んで色々な経験をしました。当時は自らが移動することで変化を感じていたわけですが、現在は同じ場所で仕事をしていますので、年月を経て変化していく周囲の様子を観察していることになります。

毎日の診療では、子供の頃から通院し、結婚出産をして子供を抱えて受診する方がおられる一方で、白髪が増え耳が遠くなり老いの進行を感じる方々、新聞の慶弔欄でお亡くなりになったことを知ることになる方々等色々な出会いがあります。自分と同世代の方とお会いしたときは随分老けたなと思うわけですが、これはあくまで自分を観測点にしているからに他なりません。そんな目で物事を見ていくと、変わらぬものや急速に変わっていくものに気づかされます。17年間で目に見える形で変化したものは、人と街の風景でしょうか。それに対して、短い年月で変わらないものの代表を挙げれば岩手山です。

わたしは毎日朝と昼の食事を終えて、歯を磨きながら家の西側の窓から岩手山を眺めています。1日の中では雲がかかったとか雪が降っているといった変化ですが、1年では春を迎えて雪が少なくなり山頂が鷲の姿を呈し、夏には青々とした景色を見せてくれます。そして冬には真っ白に染まったきれいな岩手山を楽しめます。個人的には春と冬の岩手山が好きです。毎年四季の変化に伴ってその佇まいは変化しますが、岩手山自体は変わったようには見えません。そんな岩手山も私が盛岡に居を構えた1998年頃は、火山性地震や地殻変動があって噴火の危険もありました。今は比較的落ち着いた状態ですが、自然相手のことですからいつ何が起こっても不思議はありません。人生のスケールでは変化を感じ得ないものでも、本当に長い年月の間には少しずつ変わっていくことは地球の歴史を見れば明らかです。

東日本大震災では、あの美しい海が地震による津波を引き起こしました。美しい岩手山も穏やかでいて欲しい、変わらぬ佇まいでいて欲しいと勝手に願いながら今日も岩手山を眺めている。

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